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5.22再訪朝の要点と、議論のテンプレート
●再訪朝の目的
●再訪朝の成果
- 拉致被害者(蓮池、地村)の家族5人の帰国受け入れ。
- 拉致被害者(曽我)の家族3人(ジェンキンス)との面会の目処が付いた。
- (1〜2)によって、「現在生存が確認されている拉致被害者」を北朝鮮国外に出す目処が付いた(一部は実現した)。
- 10人の行方不明者について再調査を取り付けた(独裁国家の元首に、前言を撤回させた(!))
- 10人の行方不明者について日朝合同捜査の可能性を見出した。
- 拉致問題についての膠着状態を一部打開した。
- 六カ国協議で、北朝鮮の核兵器について発言する資格を得、その進展の可能性を見出した。
- 金正日から「北の核は平和利用と自衛のためだけに使われている」という言質を取った。
(これは、直後に「北はウランをリビアに輸出している」とする情報が露見して金正日の失点となった)
- 平壌宣言に違反すれば経済制裁を発効することを、北朝鮮自身と関係国に承認させた。
(「平壌宣言を守るなら経済制裁は発効しない」の真意。国内マスコミは「経済制裁凍結」と誤読)
- 平壌宣言を条件にすることで(核兵器/ミサイルの放棄が国交正常化の前提条件とする)、北朝鮮から核実験とミサイル実験による脅しのカードを奪った。
- 北朝鮮が正常化交渉から逃げられない状況を作った。交渉の中で北朝鮮に要求を出し、それに応じなければ日本側がいつでも交渉を停滞させられるというカードが使える。
- 北朝鮮への人道支援に応じることで、薄情だという国際的非難をかわす。
(2004/6/2改筆)
●再訪朝と小泉総理の駆け引きの見所は?
(2004/6/5追加)
●再訪朝に至った流れ
- 原則論の応酬による膠着状態(2004年4月上旬まで)
- 北朝鮮列車事故発生(2004年4月22日)
- 同列車事故への人道支援を、国際機関を通じて行うことを表明(2004年4月27日)
支援規模は「10万t程度の食糧援助」
- (この間、年金未納問題が発生)
- 北朝鮮が首相再訪朝を受け入れ、再訪朝を発表(2004年5月16日)
- 再訪朝(2004年5月22日)
●報道に見られるミスリード
- ▲経済制裁はしない/経済制裁カードを放棄した
△「平壌宣言を守る限りは経済制裁はない」(平壌宣言を守らないなら経済制裁はある(!))
元の説明にあった、前提条件「平壌宣言を守る限りは」の部分が抜け落ちて、「経済制裁をしない」の部分だけが一人歩きしている。
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2004/05/22press.html
官邸からの記者会見記録にも「平壌宣言を守る限りは」という一文が明記されている。
- ▲平壌宣言には拉致問題/拉致問題解決は明記されていないので、平壌宣言の履行を理由に経済制裁を封印してしまうと、拉致問題解決にカードが使えなくなる(民主党岡田代表の認識)
△平壌宣言では「日朝の関係が正常になること」を目指している。この場合の「正常な関係」は、双方が納得しなければ成立しない。「現状が正常ではない」とする日本側の根拠は拉致問題にあり、日本側が拉致問題を「解決した」と納得しないうちは、平壌宣言が定義する「正常な状態」とは見なされない、というのが官邸側の認識。
北朝鮮の国交正常化の目的は「ミサイル商売」を封じられた現状では、(主に)日本の経済支援の獲得にある。日本側が「正常な状態」と認めない限り経済支援は行われないわけで、現実には日本側がリードしている。
- ▲せっかく成立した経済制裁法案をドブに捨てた
△2004年5月22日の段階で経済制裁法案は「成立を目指す」段階
同時に、経済制裁法案の成立を阻む、とは首相は一言も言明していない。
- ▲援助額は600億円
△現実的な援助額は60億〜100億円程度
この金額の元のソースは、勝谷誠彦氏の日記による推測が一人歩きしたものだが、600億円という数字は25万tの食糧援助が、全て「新米」で行われ、かつ日本国内のコシヒカリなどの人気ブランド米の小売価格で計算されたもの。
2003年は記録的な冷夏により、これまた平成米騒動に匹敵するほどの米作不良(これが現在の小売価格を押し上げているため、ますます誤解に繋がっているが)であり、食糧援助に新米を使うことは物理的にも不可能。
実際に提供されるのは、政府備蓄米のうち現行の保存処理が行われる以前の超古々米(クズ米と呼ばれ、kgあたりで数円〜十数円の価格しか付かないもの)であろうことが予測される(これまでも日本が国際的人道支援による食糧援助を米で行う場合、政府備蓄米の古いモノから供出してきた。今回だけ例外的に新米を使う理由はどこにもない)。
そこから計算すると、医療支援が1000万USドル(11億円程度)としても、食糧援助額は50〜90億円前後。
実際には、コストの高い国内産米や国債流通米(タイ米など)ではなく、コストが安いトウモロコシを中心とした穀物での援助で決着するようだ。食糧援助額は70億〜90億円程度の見通し。
- ▲援助された米は結局、北朝鮮軍4年分の食糧(糧食)になる
△援助される予定の食糧は米だけではない。また、超古々米の4年の保存は不可能
政府備蓄米は超古々米であり、貯蔵には特別の施設を要する。つまり、「軍用に備蓄」をするより、「もらったら配って食べてしまう」しかない。北朝鮮軍は100万人。保存が利かないからすぐに食べてしまうとすると、400万人の1年分の食糧ということになる。実際に一人年間200kgの米を食べるとして計算すると、25万tの米というのは125万人が1年で消費してしまう分量になる。(副食が少ない北朝鮮では、米の摂取量が、米以外も食べる現代日本人に比べると多いそうだ)
また、米での支援では転売や北朝鮮政府要人/軍による援助物資の占有の可能性があったが、雑穀であるトウモロコシにすることで実際に支援の必要な一般国民に行き渡る配慮をしている、と見ることもできる。
- ▲拉致被害者家族を引き取るための身代金として人道支援を行った
△列車事故の人道支援表明を北朝鮮が受け入れたので、その余録として拉致被害者家族引き取りを行った
結果から見ればどちらも同じに見えるが、名目上は「列車事故人道支援」が先にある。この支援を「ただで支援する」ではなく、「見返りをよこせ」としたのが、今回の拉致被害者家族の帰国に繋がっている。つまり、この交渉は北朝鮮側がリードしている、と見るのは誤りで、実際にリードしているのは日本側である。列車事故(支援名目)はタナボタ。
- ▲テロ国家に25万tの食糧と医療用品代1000万ドルを渡すのは売国的行為だ
△食糧・医療の人道支援は、国際組織であるWFPの要請に基づいて、WFPに対して行われたもの
あくまで、WFPという第三者機関の要請に応えたという形となっている。WFPを中継しての支援。
一方で、北朝鮮のウランがリビアに輸出されていた問題が明るみに出たことで、事情が変わってきた。これまでEU諸国は北朝鮮核問題には無関心だったが、リビアをヨーロッパ向けテロの巣窟と見るEU諸国が対北朝鮮への懲罰的圧力をWFPにかける可能性が高まった。これにより、WFPに日本が支援物資を送った段階で日本の「援助」は遂行されても、WFPから北朝鮮に援助物資が届かない可能性が大きくなっている。
結果的に、WFPは日本から預かった援助物資を、北朝鮮以外の国への援助に回してしまい、北朝鮮には届かない(約束を破らずに、圧力をかけることに成功)ということが起こりうる事態になっている。
●家族会の態度
- 家族会が再訪朝を失敗と評したことについて
家族会の期待した100%の成果は、「8人帰国+横田めぐみ、有本恵子を含む10人の生存確認と帰国+その他の行方不明者の生存確認と帰国+北朝鮮への懲罰的制裁の実行」だが、1回の訪朝で全てが解決されることは不可能である以上、どんな成果であっても「失敗」と彼らが評するのは、立場上理解できる。
- 横田父「予想される最悪の結果」
8人または5人の帰国のみで終わったことをして「最悪の結果」と評しているが、当初予定の最悪の結果というのは「結局誰も帰国できない」が、最悪の結果であったはず。何らかの結果が出ても、(仮に8人が帰国しても、10人の安否が判明しても)やはり「最悪の結果」という発言は、最初から用意されていたと見る。
家族会の立場は「首相に圧力をかける」ことにあるので、激しく怒るのはある程度は理解できる……のだが……。
- 増元弟「ジェンキンスは日本に連れてきてから意思確認すべきだった」
これは言い過ぎ。ジェンキンス(曽我家族)は、脱走兵であり拉致被害者ではない。また、国籍も日本人ではなく日本に「帰国」するというのもそぐわない。ジェンキンスは拉致を「する側」の重鎮だった、とする未確認情報があるが、それを置くにしても本人が出国拒否している状態で無理矢理連れてきたら、今度は日本が「逆拉致」の烙印を押される危険性があった。
ジェンキンスの娘二人については、元々「日本が祖国」という自覚が薄い(これは、蓮池、地村の家族についてもいずれ浮き彫りになってくるかもしれないが)。「母親が勝手な行動を取って家出し、家族を困らせている」と彼女たちの目には映っている。
- 蓮池兄「5人しか帰ってこなかったのは、蓮池・地村を孤立させるイジメ」
蓮池・地村は家族の心配がなくなった。このことは本来喜ぶべきだが、それによって曽我、安否未確認者家族との間に溝ができることは容易に想像される。(自分たちだけ幸せになりやがって、という妬み)
それに対する発言だが、では「8人同時、安否未確認者も同時でないなら、受け入れを拒否すべきだった」という主張だろうか。また、「一人でも多く助ける」とする官邸側の認識と、「家族会の結束を守る」とする蓮池側の認識が対立する構図になってしまうことはプラスだろうか。
- 今ここにいない、増元父の遺言をもう一度家族会に贈る。
「わしは日本を信じる。おまえも日本を信じろ」
●強硬意見(にわか右翼、小泉総理は手ぬるい、という論調)
- ▲北朝鮮に経済制裁を行うべき
△経済制裁の効果は一国では難しく、逆に日本が孤立する可能性もある諸刃の剣だ
ミサイル輸出という外貨獲得手段を失った北朝鮮を、これ以上経済的に圧迫する(実際にやってしまう)と、引き継ぎ基盤のないまま崩壊する可能性が高い。これについては五カ国の共通認識となっており、「北朝鮮を孤立→ヤケにさせない→国そのものを崩壊させない」のが、国際的共通認識。
経済制裁カードは、いつでも使えるようにしておくべきだが、今すぐ使っても効果はない。
- ▲北朝鮮をぶっつぶせ(攻め滅ぼせ)
△自衛隊には敵地攻撃能力はなく、法的にも許可されていない
武力行使オプションは、日本は単独でも共同でも現状は使うことができない。
威圧も含めて可能にするためには、憲法改正が必要になる。
にわか強硬派の拡大は、右に大きく舵を切った憲法改正を可能にする。(今までが左に切りすぎ)
しかし、現状では不可能である。
軍事オプションを日本の独断で採る(実行する)ことができない以上、アメリカなどに依存するカタチになるが、現状でイラクを抱えるアメリカに、二面作戦をするゆとりはない。また、イラク統治政策が難航しているのを見てもわかるように、アフガンのような受け皿基盤がない、イラク=北朝鮮型の独裁政権に対しては、「軍事的に平らげて、自力統治/治安のできる組織を壊滅させてしまう」よりも、独裁者個人を揺さぶるほうが、コストがかからない。
北朝鮮の国民の将来についての心配は彼ら自身が自らするものであって、他国が心配していいのは「人道支援」まで。それを越えた心配は、内政干渉である。金正日体制を倒すのも、北朝鮮国内(外)の代替基盤(アフガンでいう北部同盟のような)が中心になるべきで、外国勢力が他国の国民が選んだ「制度」を破壊すると、その後の復興支援が頓挫するので、手を染めるべきではない。
- ▲家族会の態度は気に入らない。引いた
△揚げ足取りに近いものもあったが、「個人的感情」の範囲であれば理解できる。行きすぎると国民感情と家族会が離反する
問題は、マスコミが小泉政権叩きのために家族会の感情的な意見をクローズアップしてリピートしている点。
功を奏せば、小泉政権よりももっと強硬な政権を造る(または、小泉政権が今よりもっと強硬になる許可を与える)ことになる。やりすぎると家族会とその他の国民の間に溝を造ることになり、家族会が同情や支援を集めにくくなってしまう。
「気に入らない」「引いた」とする意見は、その危惧の可能性の現れ。
- ▲「小泉内閣は手ぬるい」とする意見(家族会)に、マスコミが便乗
△国民総右傾化にマスコミ自身が手を貸すことに繋がっている
左傾化したマスコミが右傾化しつつある国民の支持を得て小泉政権を叩くために、小泉政権よりもさらに右に出ようとしている。これによって、世論のさらなる右傾化が予想される。
左傾化がよいとは言わないが、十分な手段や能力を伴わないまま感情の赴くままに右傾化してしまうのは、朝日新聞など戦前のマスコミが世論の右傾化を煽動して起こした日比谷焼き討ち事件の再来でしかない。
●当事者である拉致被害者自身の言葉 (NHKインタビュー生中継より)
- 地村
「テレビで会見を見た。私たちの家族は帰国になったが、曽我さんの家族は帰国できず、今の気持ちは複雑。
曽我さんの気持ちを察して声をかけようとしたが、逆に曽我さんが励ましてくれた。曽我さんの強い気持ちを理解できた。
曽我さんの気持ちを考えると、家族の帰国を喜んでイイかどうか複雑だ。
曽我さんの家族の一日も早い再会を実現して欲しい。
小泉総理には、アメリカとの政府間交渉をしてほしい(ジェンキンス氏の身分保障の件)
我々と同じように、日本で家族全員が暮らせる環境を造ってほしい。
- 地村妻
「(五人で)喜びをわかちあいたい気持ちでいっぱいだが(こうなって)残念だ。
でも希望を持って(右隣の曽我さんに向かって)。会えるんですから、頑張ってね、と曽我さんに言いたい。
- 曽我
「今日はこういう結果になりましたけれども、とにかく地村さんと蓮池さんにはこれから家族一緒に楽しく生活していただきたいと思っています。
もちろん今日はいろいろと考えましたけれども、あたしの場合ももうこれから一生会えないってことではないので、あたしもまだ場所とか日程なんかはよく決まっていませんけれども、どこかで近いうちに家族に必ず会えると思うので、その日のために一生懸命頑張りたいと思います。
それから、小泉総理をはじめとして政府の方々には、夫の難しい問題がありますけれども、その点をこれまで以上に考えて頂いていい結果が出るように努力していただきたいと心から願っております。ありがとうございました。
- 蓮池妻
「曽我さんと一緒に喜びを、なんていったらいいのか……(絶句)
5人で頑張ってきたので羽田に一緒に迎えにいきたかったが残念だ。
曽我さんを心配していたが、曽我さんが私たちの部屋に入ってきて先におめでとうと言ってくれた。
返って私たちを気遣ってくれたので、曽我さんには申し訳ないっていうか、たまらない気持ちでした。
でも、曽我さん、ジェンキンスさん、娘さんが会えるということで、そういう面ではよかったと思う。
私たちも曽我さんを応援していくし、曽我さんには再会のために頑張ってください。
- 蓮池
「私は嬉しいという言葉は言えないです。曽我さんがこうなりまして……(絶句)
でも、これで終わるはずはないです。これで再会できる、再会で終わらずに、一緒に生活できるようになってほしい。
日本で、我々と同じ新潟県で仲良く暮らしたい。
今後、日米間の問題になると思うが、見守りたい、我々にできることはなんでもやると曽我さんに伝えた。
全力で、やれることを全部やりたいという気持ちだ。
●5.22の小泉語録
- 【喧嘩師小泉】
「今は敵対関係にあるが、これを友好関係に変えたい」
(現時点において両国が「敵対関係」にあるという認識を表明)
- 【仕事師小泉】
「完全な核廃棄が不可欠である。国際的検証が必要である」
(金正日「朝鮮半島の非核化は目標である。六カ国協議で平和的解決したい」)
「日朝平壌宣言が守られるなら日本は経済措置はしない」
(「日朝平壌宣言が守られないなら日本は経済措置をする」と暗に)
- 【交渉人小泉】
「行方不明者もいるし、まだだ」
(金正日「拉致問題は解決済みだ」に対して)
「リビアも大量破壊兵器の開発を放棄した」
(金正日「我が国とリビアは(事情が)違う」。直後に米当局者らが北朝鮮が2001年初めにリビアに6フッ化ウラン輸出の証拠を発表)
- 【説得者小泉】
「I guarantee」
(ジェンキンス氏に対して日本に来ても米国には引き渡さないと保証)
「何ヶ月でもご家族と一緒に北京にいても結構です」
(曽我さんに)
- 【宰相小泉】
「すべての責任は私にある。(期待外れという)批判は甘んじて受ける」
(帰国後)
- 【男小泉】
「私のプライドよりも、ご家族が1日でも早く帰国される事を選んだ」
(家族会への報告会見での「あなたにはプライドというものが無いのか?」の質問に対して)
- 【人間小泉】
「やっとご家族一緒になれたんですから・・・ご家族仲良く」
(ホテルの一室で拉致被害者とその子供達と一緒にジュースとウーロン茶で乾杯後)
(子供達「首相と同じジュースを(自分が)飲んでもいいの?」
蓮池さん「日本はそういう国なんだよ」)